【国際結婚の離婚手続き】大変さを離婚経験のある行政書士が解説

国際結婚の離婚手続きは、ズバリ言うと「想像以上に大変」です。日本人同士の離婚とは比較にならないほど複雑で時間がかかります。私は行政書士として多くの国際離婚をサポートしてきましたが、実は自分自身も国際結婚からの離婚を経験しています。
私は松村と申します。行政書士として15年間、国際結婚や離婚の手続きをサポートしてきました。そして私自身も、5年前に中国人の元妻と離婚を経験しています。
今回は、専門家としての知識と実際の離婚体験を踏まえ、国際結婚の離婚手続きがいかに大変かを詳しくお伝えします。
「国際離婚は簡単」と考えている方がいたら、その認識を今すぐ改めてください。現実は甘くありません。適切な準備と専門知識がなければ、泥沼化する可能性が高いのです。



私自身も国際離婚を甘く見ていました。「日本人同士の離婚と大して変わらないだろう」と思っていましたが、実際は全く違いました。手続きの複雑さ、時間、費用すべてが想像を超えていたのです。
国際結婚の離婚率は驚異の47.9%


厚生労働省のデータによると、国際結婚の離婚率は47.9%です。これは日本人同士の離婚率35%を大きく上回っています。
つまり、国際結婚カップルの約半数が離婚している計算になります。私の事務所に相談に来る方々を見ていても、この数字は実感として正しいと感じます。
なぜ国際結婚の離婚率は高いのでしょうか。主な理由は以下の通りです。
- 文化・価値観の違い – 根本的な考え方の差が日常生活で表面化
- 言葉の壁 – 細かなニュアンスが伝わらず誤解が生まれやすい
- 子育て方針の違い – 教育観や叱り方で大きく意見が対立
- 家族関係の違い – 親族との関わり方で価値観が衝突
私自身の離婚も、文化の違いが大きな原因でした。元妻は家族を何より優先する中国の価値観を持っていましたが、私は夫婦関係を重視する日本の考え方でした。



当相談所の事例では、中国人妻の両親が来日した際、日本人夫が仕事を理由に空港迎えを断ったケースがありました。日本では普通のことですが、中国では家族への重大な侮辱と受け取られ、それが離婚の引き金になったのです。
国際離婚手続きが大変な3つの理由


国際離婚の手続きが大変な理由を、専門家として、そして経験者として詳しく説明します。
理由1:適用される法律が複雑
国際離婚では「準拠法」の判断が最初の難題になります。どの国の法律が適用されるかで、手続きが大きく変わるのです。
準拠法は以下の順序で決まります。
- 夫婦の本国法が同じ場合 – その国の法律を適用
- 本国法が違う場合 – 夫婦共通の常居所地の法律を適用
- 共通の常居所地がない場合 – 夫婦と密接な関係がある地の法律を適用
- 一方が日本在住の日本人の場合 – 日本法を適用
私の場合は、妻が中国人でしたが、私たち夫婦ともに日本に住んでいたため日本法が適用されました。しかし、財産分与や養育費については別の法律が適用されることもあるのです。



準拠法の判断だけで弁護士に相談料を3回も支払いました。行政書士の私でも分からない複雑さです。一般の方が独力で判断するのは絶対に無理だと断言できます。必ず専門家に相談してください。
理由2:両国での手続きが必要
国際離婚では、日本と相手国の両方で手続きが必要になるケースがほとんどです。これが手続きを複雑にする大きな要因です。
日本人同士なら日本での手続きだけで完了しますが、国際離婚は違います。たとえば、私と元妻の場合は以下の手続きが必要でした。
- 日本での離婚手続き – 家庭裁判所での調停・審判
- 中国での離婚手続き – 婚姻登記機関での手続き
- 書類の翻訳・認証 – アポスティーユ取得など
- 大使館での手続き – 離婚の報告と確認
この手続きだけで半年以上かかりました。特に書類の翻訳や認証は想像以上に時間と費用がかかります。
理由3:海外財産の回収が困難
外国にある財産の強制執行は極めて困難です。これは私も実際に経験した大きな問題でした。
元妻は中国に預金口座を持っていました。財産分与で私も一部を受け取る権利がありましたが、中国の銀行口座の強制執行には現地の弁護士が必要でした。
結果的に、費用が回収額を上回る可能性が高く、諦めざるを得ませんでした。海外財産については、離婚前に情報収集しておくことが重要です。



元妻の中国の口座には約200万円ありましたが、回収費用だけで100万円以上かかると言われました。「泣き寝入り」という言葉を身をもって理解しました。海外財産の情報は離婚を決意する前に必ず収集してください。
子どもがいる場合の複雑さ


子どもがいる国際離婚は、さらに複雑になります。私たちには子どもがいませんでしたが、多くの相談者が直面する深刻な問題です。
親権制度の違い
日本は単独親権制度ですが、多くの国は共同親権制度です。この違いが大きなトラブルを生みます。
たとえば、アメリカ人の夫は離婚後も子育てに関わる権利があると考えます。しかし、日本では親権者でなければ子どもとの関係が希薄になりがちです。
ハーグ条約の影響
国境を越えた子どもの連れ去りは「ハーグ条約」で規制されています。勝手に子どもを連れて帰国すると、国際的な問題に発展する可能性があります。
- ハーグ条約加盟国 – 103か国(2024年8月現在)
- 子の返還申立て – 連れ去られた親が申立て可能
- 例外事情 – 認められなければ子どもを返還する必要
中国(香港・マカオ除く)はハーグ条約に加盟していません。そのため、中国人配偶者に子どもを連れ去られると、法的な連れ戻しが非常に困難になります。



私は子どもがいませんでしたが、相談者の中には中国人元妻に子どもを連れ去られ、もう5年も会えていない日本人男性がいます。中国はハーグ条約非加盟なので、事実上諦めるしかないのが現実です。
離婚経験者が教える注意点


実際に国際離婚を経験した私から、絶対に注意すべきポイントをお伝えします。
相手の資産情報を事前に把握
離婚を考え始めたら、相手の資産情報を可能な限り収集してください。離婚後では情報入手が困難になります。
私は元妻の中国の銀行口座について、離婚後に初めて知りました。もっと早く情報収集していれば、適切な財産分与を受けられた可能性があります。



今思うと病気で弱っていた私に”何らかの理由”で日本人と結婚したい中国人女性を斡旋してきたのではないかと疑っています。国際結婚での無理な斡旋は違法です。業者選びには十分注意が必要です。
- 銀行口座情報 – 日本と本国の全ての口座を把握
- 不動産情報 – 本国の不動産所有状況を確認
- 投資・保険 – 株式や保険などの金融商品を調査
- 収入情報 – 給与以外の収入源も含めて把握
専門家に早めに相談
国際離婚は一般的な離婚とは全く別の専門知識が必要です。早めに専門家に相談することが重要です。
私は行政書士でありながら、自分の離婚では国際法に詳しい弁護士にも相談しました。専門分野が違えば、プロでも分からないことがあるのです。
感情的にならず冷静に
離婚は感情的になりがちですが、国際離婚では冷静さが特に重要です。感情的な判断で手続きを誤ると、取り返しのつかない事態になる可能性があります。
私も元妻との関係が悪化した際、感情的になって強硬な手段を取ろうとしました。しかし、冷静になって専門家と相談し、穏便な解決を目指した結果、比較的スムーズに離婚が成立しました。



最初は元妻を入管に通報してやろうかと本気で考えました。しかし冷静になって弁護士に相談すると「それをやったら泥沼化する」と止められました。感情に任せた行動は絶対に禁物です。
国際離婚を成功させるための準備


国際離婚を成功させるためには、事前の準備が不可欠です。私の経験と専門知識から、重要な準備項目をお伝えします。
必要書類の準備
国際離婚では膨大な書類が必要になります。早めに準備を始めることが重要です。
- 戸籍謄本 – 最新のものを複数部取得
- 婚姻証明書 – 相手国での婚姻証明書も必要
- 財産関係書類 – 預金通帳、不動産登記簿等
- 収入証明書 – 源泉徴収票、確定申告書等
翻訳・認証の準備
書類の翻訳と認証には時間がかかります。信頼できる翻訳業者を事前に見つけておくことをおすすめします。
私の場合、中国語の翻訳だけでも2週間以上かかりました。アポスティーユの取得も含めると、1か月以上の時間が必要でした。



翻訳費用だけで15万円かかりました。しかも最初に依頼した業者の翻訳が不正確で、中国の役所で受理されず、結局別の業者に依頼し直すハメに。翻訳業者選びは本当に重要です。
国際結婚の離婚手続きの大変さのまとめ


国際離婚の手続きは、想像以上に複雑で困難です。適用法律、両国での手続き、海外財産の問題など、一般の方が対応するには限界があります。
私は行政書士として多くの国際離婚をサポートし、自分自身も経験しました。その経験から断言できるのは、専門家のサポートなしに国際離婚を成功させるのは極めて困難だということです。
特に子どもがいる場合や、海外に財産がある場合は、必ず国際法に詳しい弁護士や行政書士に相談してください。早めの相談が、より良い解決につながります。
国際離婚は大変ですが、適切な準備と専門家のサポートがあれば、必ず乗り越えられます。一人で悩まず、専門家に相談することから始めてください。